父の頭は枕に埋まっていた。


 作業所のストールが織りあがった。フリンジは、うまい女性にやってもらうことになった。今回ミスが出ないよう、目を光らせたし、大きな失調はなかった。

 しかしさらに織りが続くことになった。埼玉から来ている元通所者さんが置いていった糸張り2枚目、糸がものすごく細いのを僕がやることになった。


 買ったアシュフォードは、机の上を片付け、梱包を解き油を塗った。いつでもできる状態に近くなってきた。


・ 父の施設で、枕に頭が潜っている感じに見えた父、たぶん首の筋肉も落ちてきたと見えた。だんだん近づいて来ているようで恐くもある。その父を見ていて、僕は父母は近づいてきているけれど自分はまだ大丈夫と、父母に被せて自分の死を見るのを避けているのに気付いた。僕の先も必ず終わりが待っているというのをわかってしまった。

 わかってしまったというと、本当は、もっと早くから目を逸らすことをしていた。たぶん母に人のせいにしないで、と言われ抑圧した時、僕は自分の死も目を逸らしていたという気が直感的に強く感じる。自分の未来・確実に死ぬというのが真実だ。その日は必ず先で僕がたどり着くのを待っている。これは避(よ)けようがなく、いつも頭の片隅に置いておくべきものだ。この大事な事も小さい時から僕は見てこず、目をつぶってきた。

 父母に肩代わりさせて、自分の死を見てこなかった僕はよほど間抜けている。未来、必ず僕は死ぬんだ。みんなも必ず死ぬんだ。(しつこいが)




 古くて汚らしいバッグを無印のバッグに取り換えた。

 最近冷凍食品やレトルトパウチを食べることが多い。料理にエネルギーをかける気がしない。





 アシュフォードを机の上に乗せ、油を塗ったのは、良い行為だった。
 自分の死をいつも意識しているようにはしたい。
 明日からの細い糸の織りを頑張りたい。調子が悪そうだったら早めに切り上げる。そういうのが正解の取り組みだと思う。