父の世代。

 父の世代、僕の親世代は今崖っぷちだ。父の状態が良くない。明日母と二人で最後の面会に病院へ行く。

 関係親戚に電話をたくさんした。母方の叔父さんたちは皆がんを患った。奥さんが倒れたおじさんもいる。このおじさんは米農家で、日本人に美味しいコメを供給してきた人だ。そのおじさんも90歳となり、今追いやられている。苦しい胸の内を抱えているように、電話の声を通して、朴訥・ぼくとつ と語る声を受話器を通して聞いていて、ざらついた音声を通して遠い地からの声を聞いていた。途中沈黙もはさんだりして受話器越しに立つ90歳の男の声を受け止めようとしてみた。

 父世代は苦しく、追いやられている。今まで頑張ってきて、輝ける未来があるはずだったのに、実際は厳しさを突き付けられ、甘んじるしかない受け手の立場を全うしようとしている。

 父世代がいなくなったら、僕が老人に突入し、僕が死んでいく世代を担わな・になわな ければならない。死んでいく役目だ。父世代がいなくなったら、僕も消えゆく世代をやっていくことになる。

 父方の叔父さんの奥さんが亡くなったとのことだった。昨年の暮れらしい。父と僕に金を返せと、一時食ってかかった人たちだった。おじさんの親が持っていた金を手にしたおじさんから、父が巻き上げたように僕は見ている。出所の良くない金。それをいいことに、巻き上げる父の狡さ・ずるさ。また、父と僕にお金を返せと食ってかかったおじさんたち。父と僕はやり過ごす手を使った。そのうち奥さんは亡くなられた。ここも重い。