車いすの先生:作業は自分のためか?

 毎日、毎日 同じ作業の繰り返しだ、と思った。お昼ごろ、入居者さんが見る中、洗面台を手順通りに進め、終わらせようとしていた。また同じことを繰り返してと。糞っと思っていた。
 終わって振り返って入居者さんの間を通ろうとしたとき、車いすの人が顔を背けた・そむけた。僕は嫌われているんだなと思った。ちょっと自分を振り返った。僕は自分のために仕事をしていた。お金儲けのため。給料をもらうため。そこに、入居さんは入り込む余地はなかった。僕は僕だけのためにいた。

 よく人のために何かをするとか、仕事をするという。そのことを思った。自分のための仕事ではなく、稼ぐためではなく、入居さんが気持ちよく過ごすための仕事。オッと、きれいだな、と思ってもらうための掃除。ちょっと驚きがあるとなお良い。僕も先人に続いて、人のために仕事をしたらどうだと思った。そのことを考えながら午後は作業した。

 車いすの人は、午後もみんなが集うテーブルにいて、僕とかを見ていた。今度は顔を背けていなかった。この人に教えられた。車いすの先生だった。