甘えている:弱い男:

 お客様は、こないだ見えられたときは大島紬も直したいとのようなことを仰っていたが、客注2枚目はなかった。たぶん、様子見に回られたのだろう。

 今日で客注は終わった。丁寧にやったつもり。レベルは高くないけれど、油断して失敗したくなかった。今日はそんなに調子は良くなかった。着物には4か所くらい染みがあった。

 昨日はテーラーSG氏が掃除機かけを半分手伝ってくれた。


 今日着物の糸取りをやっていて、後ろに嫌な気配を感じて糞・嫌だなと否定した。スタッフの一人の方だったようだ。その方は男らしい方である。
 そのあと、強い女2人がああだこうだくっちゃべっていた。糞・なんか嫌だなと思い、バッチっと箱を閉めた。別の時だけれど、スタッフの方はずっと僕を変な奴だという感じで見ていた。


 どうもそのスタッフの方が気になった。僕は強がっていたのではないか。前に自分の家の部屋に貼っておいた「弱い男」という標語が、僕が避けている言葉ではないのか。僕は何か言葉を飲み込んでいる気がしていた。それが「弱い男」ではないのかと、作業所から帰った家で思った。

帰りに、作業所に通うみんなの親父という感じのスタッフの方に声をかけていただいた。珍しいことだった。



 いつもの着物の糸除去、今のは道行コート糸が切れやすくて、がっちり細かいミシン目で縫われているもの。これを引っ張って解体しようとするとスタッフににらまれる。何ら糸切断と変わらなくても。思うに、引っ張ると生地が傷むからではないかと思った。負荷がかかり過ぎる。それで、今日は引っ張らないで(一昨日は引っ張った)切断していった。返し縫いでどうにもならない部分は、針で一目ずつ掬って切っていった。この針を使うやり方は新しい方法で、昨日から導入した。なかなかいいやり方だと思った、自画自賛


 部屋の隅っこの角にいる僕だけれど、隣は布草履の達人。編むのがうまい。うまいというか国宝みたいにきれいに編む。この方も男なので、うかうかしていられない。ごみをぽっと捨てて牽制してきたり、達人が今やっているボールの縫いを直す:新しい糸で弱った部分の糸を取り除いて縫い直す、その赤い糸を僕の頭にぶつけたりする。咳をゴホッとしたり、僕が上の空で別のことを考えたりしていると、牽制される。男だから、このくらいはやってくるだろう。そんなものだよね。


 この間の布に穴をあけたのは、僕が席替えがいやだったから、無意識で破る方向を選択したのかもしれない、拒否として。だから僕はかなり甘えん坊だ。餓鬼んちょと一緒だった。かなり大甘だったことに気づいた。格好悪いがそういうことだった。これも「弱い男」の範疇・はんちゅうに属すると思う。 

<おわり>

 強がって他者の攻撃をかわそうとしてきた罰が当たったのかも。弱いのに。