作業所辞めた。弾き出された。あっさりおわった。

 作業所で、前回父の面倒で一度やめたときは、帰って来いと言われた。2度目の作業所だが、途中辞めたいというと慰留された。3度目の今回は、意志が固いだろうからと、残念そうなそぶりで引き止められなかった。
 僕は昨日ボスが、昼に作業していて、またやってるよと同僚につぶやいたのを聞いていた。ボスは僕が辞める気がなさそうなのを不満に思っての言葉だった。私物を捨てないでおいてきた。必要なもの以外だが。(掃除を完璧にしなかったということです) スタッフかボスが捨てたと思う。
 ボスは、玄関で僕がありがとうございました、お世話になりましたと言うと、深々とご苦労様でしたと言った。ボスの頭下げを見た。
 それはボスが、ビジネスマンとして優秀であり、如才のなさを示していた。役者として完璧で、仕事でも優秀であると。

 ちょっと辞めるための事務で攻防もあって辞めたが、向こうも関係がなくなると思うと値引こうとしてくる。

 すぐ職安に出かけた。医師の診断書が必要だと言われ、すぐ働けなくなった。今週いっぱいはかかると思う。
 職安で、めぼしい職業を書き写しておいた。証明写真も撮って老け顔の自分の顔を見た。ボックスが、僕の顔写真をペッと吐き出した。それをありがたく受け取って自分の顔をまじまじと見た。古い写真でもよかったが、新しくしてみた。

 自分ではミスも多く迷惑をかけたが、一生懸命働いたつもりだった。でも、終わってみると、職場内での頑張りで、離れるとなると何も残らなかった。ただ、次の仕事をすぐ見つけようという熱意、それだけが残った。ボスのお世辞くらいしかねぎらう人もいず、一人放り出された。

 なるべく情報を集めようとは思う、職安、本屋、図書館、新聞、くだらない記事でもいいから瓢箪から駒の根性で探っている。良い出会いがあるといいが。今日は暖かかったが、秋の寒さが身に染みる季節になった。今日は感傷的だ。急に放り出されたから。
 作業所のみんなも、僕を排除する流れだった。ただ、悩殺TS女だけが、また調子が良くなったら戻ってきてくださいと言った。この女、僕に気が全くないのに、結婚しているのに、僕が起勃して失敗をやらかすのではないかと期待してなのか、鎌をかけてくる。ちょうどよい石ころくらいにおもっているのだろう。ちょっとくやしい。茶々を入れてきやがる。もう会うこともない。

 僕は作業所に行く前に、大通公園西13丁目くらいのバラ園でバラの花びらを触るのを日課にしていた。薔薇の名前と花びらを関係づけて、いくつかのパターンに分類できる品種改良を愛・め でてきた。薔薇の花が好きになった。茎のとげは嫌だが。やけにとんがって刺そうとしている。

 診断書が下り次第、働こうと思う。雇ってくれるかはわからないが。有休がだいぶ残っていた。1日しか使わず、1年半過ごした。昨日付で退職した。すぐに働くつもりだ。このご時世、休んだ後の人間を雇うとも思えない。すぐに復帰する。ぼすのやつ、体調がすぐれずでやめると、すぐ金がもらえると言ったが、そんなことしたら働けなるだろう。一身上で辞めた。ずるさも見せるボスだった。なんせ優秀なビジネスマンだ。腹黒くもある、それだけ自分に正直なのだが。本音トーク満載のボスだった。

 作業所にはなじめないやつも何人かいたが、もう終わった。悪口は言わない。ボスにだけは吐いた。

 皿洗いや、ごみ集め捨て、床拭き、トイレ掃除結構大変だ、着物の解体、誰に割り振られるのか。泣くやつはいるだろう。僕の後釜はけっこう地味でやりたがらない分野だ。

 今はちょっとの解放と、ちょっとの憂鬱と、身寄りのなさ、秋の夜、僕も53歳で、職歴も残すところ短くなった。60歳以降も働きたいが、命があるか、技術を持てるか。ため息をちょうど吐いたところ。下を向き腕組みして、なるべき早く復帰したいとしか言いようがない。有休も捨てたことだし。ボスに負けていられない。<おわり>