老化の道。 ::もう僕は歩き始めている::

 父は老化の毎日を過ごしている。この間、3回転んだ。ケアマネージャー様は骨折を心配されていた。

 老化とは、今まで空気のように自然にできていたことができなくなり、屈辱とふがいなさ、寂しさ、マイナスのスパイラルへと吸い寄せられる負の螺旋(心理学の本に出ていた表現:勝手にここに剽窃しています)に巻き込まれて出てこれない、悲しい一方通行の出口のない道を強制的に歩かされる、忍耐を求められるひどい仕打ちです。

 この状況下で父母は毎日を過ごしています。老化と言う避けられない、誰にでも降ってくる無理強いに必死に戦う、勝ち目のない戦・いくさ を父母の世代は必死に食らいついています。格好の悪いヒーローです。負け道をよけずに戦い続ける正義の味方なんです。これを人類は営々と行ってきたのでした。

 僕のそのレールに乗っています。51歳、ちょうど敷かれたレールに気づかずに走り出したところです。片道切符で出口のない一方通行。衰えマイナスの壁に包まれ、叫びも届かず、負けを突き付け、負けしか許さない、華々しい道とは全く別の悲惨な道が用意され、僕は完全に乗っかりました。どこにも助けはないです。


 統合失調症と言う負けを僕は戦い続けてきました。最近好転して、勝ち始めています。でもこの勝ちは若さゆえのもので、老いの道を進んでいる僕は、ある時を境に老化を突きつられ、また負け戦に戻っていきます。今の僕の幸せはほんのわずかな期間だけ許された、ほのぼのとした、猶予期間に過ぎない。強制的に目を覚まされ、奈落へと突き落とされる。

 僕が勝ち始めたと浮かれても、すぐそこには老化が待ち構えている。逃げも隠れもできない完全マイナスに囲まれた敗北の日々が用意されている。僕に有利な点は、統合失調症で、負けの真髄を舐め齧ったこと。これを使って、負け戦をせよとの、神の指示でしょう。統合失調症経験と言う、完全なるマイナスが僕のフォローとなる。


 こうなったら、僕の財産は統合失調症だ。これが宝となり、反転し、光を灯・とも し、前方を照らす。でも、苦痛が減るわけでも、軽くなるわけでもない。戦い方を知っていると言うだけだろう。戦い方と言っても、負けを粛々と受け、重荷を背負いながらトボトボ歩くことだ。老化という荷物はもう背負った。はじまっているんだ。自覚してくれ。父母が老いを見せてくれている。僕は父母を通して、自分の先の人生を思い巡らす機会を父母からもらい、負けのヒーローたる父母から歩き方をレクチャーされている。父母は老化の先生で、先導役で、僕に老化という財産を分けてくれている。有難く受け取っておくといいよ。でも、僕には僕の老いがある。父母と同じ負荷がかかるが、反応は父母とは変えていきたい。僕には僕のための老化がある。先行き甘くないさ。苦い道を舐めてくれ。知らないうちにサイコは振られていた。今日気づいた。今気づいた。この道を歩けという。強制の暗い道は先へと延びている。頭・こうべ を高くして、歩いていくれ。独自の老化を見つけてくれ。父母とは違う道を歩いてくれ、自覚してくれ、逃げ道はどこにもないと。もう始まっているんだよと。<Dead End>